1974年にルービックキューブのプロトタイプが作成されてからおよそ40年。
発明したのは皆さんご存知のエルノー・ルービック博士です。
今回は、40年の間に積み重ねられてきた、3x3x3キューブの改良の歴史を簡単にご紹介します。
1974年 プロトタイプ
写真は、Tony Fisher氏によって2014年に作成されたレプリカです。6面の色を揃えるものでは無かったようですね。
余談ですがこのレプリカ、オリジナルのステッカーのズレまで忠実に再現しています。
今でこそお店で気軽に買えるルービックキューブですが、当時これを作り上げたときの博士の興奮は計り知れません。回転が快適でなくても、このおもちゃ(教材として開発されました)は絶対に面白い。ルービックキューブの魅力の根源、象徴のような存在ですね。
ちなみにサイズは76mmほどで、現在のルービックキューブよりもやや大きかったようです。
1977年 Magic Cube
こちらはブダペストのおもちゃ屋さんで販売されたという、世界初の市販キューブです。
1980年にアメリカのアイデアル社がRubik’s Cubeという名前を使うまでは、Magic Cubeとして販売されていたようです。
当時はセンターの裏側がフラットでした。写真は2007年のものですが、ルービック博士が生まれたハンガリーでは、このような旧構造のキューブが長い間販売されていました(現在も販売中かは不明)。
2004年 Rubik’s Cube (アーチ構造)
時期については正確でない可能性があります。
2000年代に入ると、競技としてのルービックキューブが再び注目を集めるようになります。現在のWCAが結成され、日本でも公式大会が開かれるようになりました。
その頃に採用されたのがこのアーチ構造です。フラットなセンターに、付け足したようなアーチ構造が見られます。
アーチ構造によって、エッジやコーナーがより安定するようになります。回し心地だけでなく、POP耐性も向上しました。
番外編 ビス式とリベット式
日本で市販されているルービックキューブは”リベット式”(釘式)を採用していて、柔らかさを調整することができません(1980年〜2000年頃もそうであったかは不明)。海外でも、同じようなリベット式のルービックキューブが販売されていました。
このリベット式には、玩具として、大量生産品としてのメリットがあったものと思われますが、”柔らかいキューブを使いたい”というキューバー達の本能とは逆行したものでした。
そこで先人たちは”センター引き抜き”という秘技を編み出します。当時の涙ぐましい努力の様子をご覧ください。
この頃のPOP耐性技術はアーチ構造くらいでしたから、センターを引き抜いたキューブはPOPしやすくなるわけです。しかも、一度引き抜いたセンターを打ち直すのは容易なことではありません。引き抜きの際リベットが外れてしまったり、打ち直すときにコアが砕けたり。その度におよそ2,000円が飛んでいきます。
販売期間については不明ですが、Rubiks.comからビス式のルービックキューブを輸入することができました。
センターキャップを開け、ビスを回すだけでキューブの柔らかさを調整することができる。これは涙が出るほど嬉しい機能でした。スプリングをより柔らかいものに交換することもできます。
2010年 DaYan GuHong (リバースコーナーカット)
アーチ構造の開発以降、Type-F2などのキューブが流行しました。これらは角部が若干丸かったり、スプリングが柔らかかったり、表面がツルツルしていたりといった特徴を持つもので、大きな改良はされていません。
そんな中発売されたのがDaYan GuHongです。この曲線的なデザインによって、リバースコーナーカットという機能が付与されています。
コーナーカットとは少しU’した状態でもR’できるという機能、リバースコーナーカットは少しUした状態でもR’できるという機能です。もちろん、この機能はどのキューブにも少し備わっています。GuHongのリバースコーナーカットもそれほど大きかったわけではありませんが、この後のキューブ開発に大きな影響を与えます。
リバースコーナーカットの発達によって、キューブを正確に90度ずつ回す必要性が薄れ、より乱暴に回すことができるようになります。それによってタイムが向上することになります。
2011年 DaYan LunHui (Tパーツ)
最近の競技用キューブには必ず付いているTパーツ。2011年頃、DaYanによって開発されました。
写真のコア付近に4つ見える鋭い部品がTパーツです。Tパーツの役割は、コーナーパーツの内側に引っかかることでエッジパーツのPOPを防ぐというものです。
この機能によってPOPを予防することができるので、これまでよりもビスを緩められるようになります。
ビスを緩められるということは、コーナーカットが大きくなるということで、これがタイムの向上に繋がるというわけです。リバースコーナーカットもやや大きくなります。
DaYan LunHuiはTパーツの有用性を証明するとすぐに姿を消し、その後発表されるDaYan ZhanChiの時代が始まります。DaYan ZhanChiは比較的大きなリバースコーナーカット性能(triboxレビュー2.3点)を備えており、Tパーツによって「乱暴に回してもPOPしない」という世代の代表的なキューブになります。
回し心地が良く、乱暴に回してもPOPしないキューブというのは、競技用キューブのゴールとも言えるかもしれません。
今後の展望
現在の最新競技用キューブは、ZhanChiの世代に含まれると言っていいでしょう。
最近では、リバースコーナーカットを広げる試みがAoLong V2 (triboxレビュー2.6点)やGans357 (triboxレビュー2.9点)によって順調に前進し、リバースコーナーカットと安定感の両立を目指す時代、あるいは、リバースコーナーカットか安定感、どちらかをユーザーが選ぶ時代がやってくると推測しています。
Gans357に対抗できるキューブとして、MoYu HuaLongが先日発売されました。現在triboxレビューの評価作業を進めていますが、途中経過を見ますと、コーナーカットは2.5〜2.8点、安定感は2.5点前後というスペックが予測されます。
Gans357(コーナーカット2.9点、安定感1.4点)よりもやや大人しく、安定感は圧倒的に高いということになろうかと思います。
究極のリバースコーナーカットを手に入れたGans357に対して、バランスを取るMoYu AoLong V2やMoYu HuaLong。いずれもコーナーカットは2点台後半です。ZhanChiやWeiLong V2のような、コーナーカットが2点台前半のキューブが主流であった頃とは、少し時代が変わってきたでしょうか。
ちなみにAoLong V2の安定感は2.3点です。果たしてHuaLongはコーナーカットと安定感の両方で2点台後半を取ることができるのか、今からtriboxレビューの結果が楽しみでなりません。
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